2007年10月14日

辛い。。。

準夜も終わりに近づいた真夜中近くになって
ホットラインが鳴り響きました。

搬送要請は大人1名・子供1名の同時2名
こういう要請は結構みんな嫌な予感が働きます。。。
唯でさえ3次救急のうちに搬送されるのは生命にかかわる
重篤患者さんなのですから、大人子供同時搬送とは
その裏に孕む事実はかなり悲惨なケースが多いのも事実です。

この搬送ケースもやはりその悲惨さを孕んでいました。

20代後半のお母さんと5歳のお子さん。
睡眠導入剤の多量服薬による意識混濁・呼吸停止etc.

おそらくお子さんに先に服薬させてから、
お母さんが続いたのでしょう。。。 

どの程度の量を服薬したか正確にはわかりませんが
こう言うケースでは大抵お子さんが重篤になります。

同量を服薬したにしても、子供の体格ではその薬効が効き過ぎ
危険にさらされてしまいます。
残念ながら今回のケースも同様にお子さんは到着時には
反応は無く心臓も停止した状態でした。

お母さんは意識混濁とはいえ処置に対応出来うる状態で
お二人とも同時に処置開始。

私はお子さんの処置に回り、心停止からの回復などのケアに
当たっていましたが、先に意識回復したお母さんが
隣のカーテンで嗚咽を零すのが聞こえていました。

お子さんを道連れにと考えたのでしょうが
お子さんには自分の人生が有ります。
それを不憫に思ったのかもしれませんが、それでもお子さんの
人生を摘み取ってしまうのは親の権限では無いように思います。

こう言うケースを何度か目の当たりにしてきたなかで
特に自分の意思も表せず、母親を頼り信じきってる子供の
命を絶ってしまうことは辛すぎます。。。

Dr.もその事は可也意識していたようで
処置中も何度も声に出して、お子さんに向かって
「絶対に生きなきゃいけない、お母さんを一人にしちゃ駄目だ
 お母さんが強く生きるためにもお前は助からなくちゃ」
そう言いながら、何度も何度も「絶対に助けるから」って
言いながらの処置でした。

隣のカーテンからお子さんを気遣うお母さんの声が聞こえた頃
お子さんの処置も目処がつき、呼吸も安定させる事が出来ました。
でも心停止の時間が長かった事もあって、命は助かっても
脳への障害が心配される状態に変わりありません。

命は助けることが出来ても、この子の負ったダメージは
生涯消えることは無いでしょう。。。

お母さんはお子さんを気遣う事が出来ているので
後はカウンセリングなどのケアで回復も望めますが
小さな子が被害を追うというのは、やはり辛すぎます。。。





at 01:46│Comments(8)TrackBack(0) お子さんたち 

トラックバックURL

この記事へのコメント

8. Posted by なすび   2007年10月16日 11:10
ばーびーちゃん、こんにちわ。
誰しもが予想だにしなかった結末です。
お母さんは既にメンタル以外のダメージから回復され
今は心療科へ転棟されてカウンセリングなどのケアに入っていますが
お子さんのダメージは未だ予断を許す状況にありません。
今はお母さんの面会が、双方のケアにどう影響するか
精神科医ともミーティングして今後を考えています。
お子さんのベットでの横顔を見たら
お母さんの心的ダメージが大きくなりそうですし。。
今しばらく慎重に対応していく必要が有ります。
7. Posted by なすび   2007年10月16日 11:05
wiredさん、こんにちわ。
確か西海岸での出来事でしたね。
しかも第一級殺人扱いだったと思います。
殺す意思があって犯行に及んだと解釈され、
日本でもニュースになりましたね。
心中は「殺す意思(殺意)」が有るのは勿論だけど
残すことを思いやる親心も影には含まれるように思いますが
やはり「人生は親の物ではない」という判断が主流の意識の違いでしょう。
生死の現場に身を置いていると、私もやはり
「人生はそれぞれ個々のもの」と言う思いが強くなりました。
6. Posted by なすび   2007年10月16日 11:00
徒然さん、こんにちわ
今朝方もベットサイドケアをしてきましたが
残念ながら未だお子さんの意識は回復していませんでした。
脳外科の専門医も診療に当たりましたが
やはり初期ダメージが大きく、今後が心配されます。
お母さんを守って上げられるぐらい強く生きていって欲しいのですが
それ以前の問題がこのお子さんには山積して、可愛そうなほどです。。
5. Posted by なすび   2007年10月16日 10:57
sacchinさん、こんにちわ。
お子さんもこの年齢になると完全に記憶に残りますから
ゆくゆくのトラウマにならなければ良いのですが。。。
でも逆に「お母さんを守ってあげなきゃ」って思えるような
強い男の子になってくれれば、助かったことを喜んでくれるんですけどね。
頑張って生きていって欲しいですね!
4. Posted by ばーびーちゃん   2007年10月14日 21:58
こんな結果になるなんて
お母さんは想像もしなかったでしょうけど
あまりに代償が大きすぎますね。
ちゃんと生きていけるのでしょうか・・・
3. Posted by wired   2007年10月14日 21:08
辛いですね
国民性なんでしょうか
のこしていく子供を不憫に思い
道連れに自殺と言うのは
以前、
海外で子供と自殺した日本人の母親が
殺人罪で起訴された事件がありましたね
強く生きて欲しいです
2. Posted by 徒然   2007年10月14日 20:10
本当に後のことを考えると、子供の今後が心配されます。
こうなる前に、もっと身近に相談できる方が居たらとおもうと切ないですよね。
少し話が飛躍しますが、そう考えると赤ちゃんポストも一つの手段としては大切なのかもしれませんよね。
1. Posted by sacchin   2007年10月14日 17:57
そうですよね。
助かった後の事なんて、考えた事なかったです。
親に殺されかけたというのは、一生涯残り続ける悲惨な体験ですよね。
親以上に強くなって、乗り越えてほしいです。
言葉で言うのは簡単かも知れないけど。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
最新コメント
QRコード
QRコード