2008年11月19日

ご家族の負担が。。。

心配していたことですが・・・

私の勤務が始まって間も無くホットラインが鳴り響き
自殺企図の女性の搬送要請がありました。

入ってくる情報から受入準備を整えるのですが
容態は2次救急病院での対応相当のように思えます。

それが患者さんのご主人の依頼でこちらへの搬送を希望され
その理由が、こちらの心療内科への通院歴が有る事と
息子さんが入院中という事からのご希望だったようです。

到着時までお名前の情報は無かったのですが
何となく私には嫌な予感みたいなものがありました。

そして到着時、ストレッチャーに乗った患者さんのお顔を見て
その予感が当たってしまった事に愕然としました。

以前、このブログでご紹介したことのある
呼吸器科へ入院されている小学生の男の子のお母さんでした。


お子さんがリハビリの為にDr.から貰ったリコーダー(縦笛)を
宝物のように大切にして、毎日練習していたあの少年のお母さん。

先天性肺疾患のお子さんの長期治療に悩まれていらして
Dr.の勧めで心療内科を受診されていた矢先の自殺企図。

幸い2次の病院で対応出来得る範疇の症状でしたので
搬送時に意識も有り、私の顔を覚えていらしてくださったりと
検査と処置を終えると、通常ならご家族も受入可能との事なので
直ぐに退院できる状況まで安定されていらしたのですが、
ご本人の希望も強くそのまま心療内科へ転棟されて行きました。

私も勤務後に白衣のまま心療内科のベットへ様子を伺いに行き
少しお話をする事ができましたが、
まだ興奮を抑えるお薬が残りボーっとされていらしたので、
長居はせずにご挨拶だけして引き上げました。

そして帰り際にご主人から声を掛けられ少しお話を伺えました。

最近の鬱傾向の激しさから、いつかこんな事を起こすのではと
ご主人の出勤前に台所の包丁やハサミ類を隠したり、
救急箱のお薬も錠剤や粉剤などは全てしまって出かけたそうです。

それが昨日は一人でお子さんの面会に出かけた帰り道に
市販の風邪薬などを買った事にご主人も気付かず、
奥様はそれらを大量に飲んでそのままお風呂へ入ったそうでした。

間も無くご主人が様子を見に行って異変に気付いて119要請。
症状は軽くて済みましたが、心の傷はまだ癒えていないでしょう。


お子さんは生まれてからほぼずっと病院での生活を余儀なくされ
学校に上がる歳になっても入学式には病院から出掛けたそうです。

それでも最近は一人で院内なら歩けるほどの体力も付き
一時的な長期外泊(期間を決めた仮退院)も可能なほどまで
回復されてきていたのですけれど。。。

そこまで頑張って応援されて来られたお母様のご苦労が
ここへ来て内向きに爆発してしまったのでしょう。

小さなお子さんを亡くされたり、大病をされたりすると
殆どの母親は先ず自分を責めます。

こんな身体に生んでしまった自分がいけないとか
母親としてもっと注意して上げればこんな事にならなかったとか

そして自責の念に駆られ、こう言う自傷に走る方は多いのです。

搬送されて初めて御家族がその負担の重さに気付く
そう言うケースは珍しい物ではないのです。

ここまで思い詰めていたのかと嘆くご主人・・・

心療内科の主治医の話からも、こう言うケースは良くあるそうで
燃え尽き症候群のように、一つの山を乗越えられそうになった時に
それまでの責務を果たした事を振り返り、
逆にその原因が自分に有ると思い込んでしまうそうです。

お子様の回復の支えになっていたお母様には
そのサポートをご主人が十分にこなされていたのでしょうけれど
お子様の不憫さを思い儚み自責の念に駆られてしまったのでしょう。

実直な方であるが故に、お子さんへの思いが必要以上に強まり
その責任感に苛まれてしまったのが痛いほど分かります。


お子さんの長期入院や社会性の育成にも心配の種は尽きず
一人でその責を背負い込んでしまったお母さん。。。

入院が長引くご家族のいらっしゃる家庭へのサポートは
並大抵の事ではないのですから
家人のみならずのサポートが重要になってくるのでしょう。

そうでなければご家族の負担が大きすぎますもの・・・。

お子様の回復が進んだ事は喜ばしい事ですが
それに起因したお母さんの自傷、そして入院。。。

このご家族へはお父様を含め、
カウンセリング等で責の向け方を話し合うお時間が必要です。

お母様の自傷をお子さんに告げる事も出来ない情況ですから
ご家族3人での今後の道筋を、この入院中にゆっくりと
心療内科の医師やカウンセラーとの治療に当てて頂ければ
そう遠くない時期にご家族3人で過ごす時間を持てるでしょうね。

今は少しご家族だけの時間を大切にされて欲しいと思います。

それがお母さんの心的回復になり
そして何よりお子さんの肺疾患の回復にも繋がるのですから。。。













at 13:01│Comments(10)TrackBack(0)リコーダー 

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この記事へのコメント

10. Posted by なすび   2008年11月25日 18:29
ばあばさん、こんばんわ。
ばあばさん仰るように、お父様のサポートを受けながらも
お独りで可也の重責を肩に抱えていらしたようです。
そしてお子さんの体調に一喜一憂しながらの
9年間でやっと先に明かりが見え出した頃
その自責の念に、
それまでの信条が押しつぶされてしまったのかもしれません。
篠笛の話をさせて頂いたときのあの笑顔を
もう一度取り戻される日が訪れるように
医療者としてのサポートをしていこうと思います。
9. Posted by なすび   2008年11月25日 18:24
ニコニコおかみさん、こんばんわ。
現場で見ていると、生で痛々しさが伝わり
このお母さんの重責がどれ程の物だったかが
計り知れる気がしてしまいました。
今後のサポートをお子さん・お母さん・そしてお父さんといった
御家族全体のトータルケアを敷く体制で当る事になりました。
一日も早く皆さんの笑顔が見れることを祈りながら。。。
8. Posted by なすび   2008年11月25日 18:21
徒然さん、こんばんわ。
母親の気持ちは母親しか分からないとも効きますから
このお母さんの本当のお気持ちを私が察する事は
どう足掻いても出来ない事かもしれません。
それでも肌で感じる事といえば
やはり母親の重責に押しつぶされそうになっていらしたのかなと
そう推測できるような気がします。
お子さんの回復にあわせて、それまでの御主人の家族からの
励ましの言葉も彼女には胸を柵思い出受け止められていたようです。
そういった一つ一つの自責の念を
今後時間を掛けて取り除くお手伝いをしていくのが
医療者として出来る事かと感じています。
母は強し、でもサポートは誰にでも必要ですものね。。
7. Posted by なすび   2008年11月25日 18:16
wiredさん、こんばんわ。
一つの結果を得られる事で、今まで張り詰めてこられた箍が
ふっと、外れてしまったのかもしれないですね。
そして自責の念に苛まれ、このような自傷に走ってしまったのでしょうか。
まだお子さんに詳細の説明は出来ない状況ですが
今後のケアの中で、御家族みんなの明るい笑顔を取り戻せるよう
サポートさせていただこうと思います。
6. Posted by なすび   2008年11月25日 18:12
アキラさん、こんばんわ。
アキラさんもお辛い経験をされてこられたのですよね。
それを乗越えられた事の深い意味を
今私も感じています。
この病気は患者さん一人ひとりの対応が異なりますので
風邪や盲腸のように、前の人にはこれで効果が有ったからと言って
他に人に同じ処方が有効とも言えず
オーダーメイドのケアを続けていく事になるでしょうが
最後は患者さんを支えてくださる身内の愛情かもしれません。
息子さんの回復も含めて、今後のケアに注力していく他はありません。
色々ご心配をおかけしました事お詫びし
改めて心より感謝いたします。
5. Posted by Happyばあば   2008年11月23日 10:23
なすびさんがあんなに心配なさってたのに、大変なことになってしまいましたね。
命に別状なくてそれは良かったです。
軽々にものは言えませんが、
お母様は長い間少年の様子を見て毎日一喜一憂を繰り返してこられてたんですね。
精神的にそうとうお疲れになっていたんだと思います。
篠笛をプレゼントされると聞かれたときはあんなに喜んでいらしたのに・・
光を見たり落ち込んだりのくり返しだったんでしょうか。
1日も早く落ち着かれて少年ともども快方に向かっていただきたいです。
4. Posted by ニコニコおかみ   2008年11月23日 10:04
胸が痛みます
辛いお話でコメントも直ぐにかけませんでした。
自分を責めてしまうお母さまの気持ちヨ?く分かります。
どうしても人は愛する者に辛い出来事があると
「自分のせいでは?もう少しこうしてあげていればこうならなかったのでは・・・!」
と責めてしまいます。
お母さまもそれをささえるご主人も そして少年も辛いですね!
少しでも 光が見えてくる事を祈らずには折れません。
3. Posted by 徒然   2008年11月21日 16:00
自分が母親になって・・・このお母さんのお気持ち、凄くわかります。
今、息子が風邪をひいています。
風邪だって、生まれて間もない子に私が風邪をひかせてしまったって思う気持ちがありますもの。。。
それが回復なさっているとはいえ、長期の入院。
今までのお母さんの心の負担は大きかったんだと思います。
息子さん・お母さん共に回復なさって息子さんの縦笛を家族みんなで楽しめる日が早く来るといいですね。
2. Posted by wired   2008年11月19日 22:11
言葉が無いです
毎日、子供の事を思い
前向きにがんばってこられたんでしょう
疲れて、逃避したかったのかな
自分を責めてしまうのか
それだけ、愛しているのだから
早く良くなって、いや、ゆっくりと良くなって
家族で色んな思い出を作って欲しいです
1. Posted by sinobueakira   2008年11月19日 15:36
なすびちゃんが心配していた少年のお母様の状況は深刻な結果になってしまい残念です!
精神的な病は自分以外の第三者にはわからない孤独で非常に厄介な病だと思います。お母様の心の中にはなすびちゃんが想定しているものよりもっと重たい暗い鉛のような重石がのしかかり、耐えられなくなったのではないでしょうか・・・・
そんな状況の中でも、命をとり止めたのはまだ別の世界に逝ってはいけないということだと思います。
私も鬱病の時には、会社のビル(9階)の屋上に登り、真下を覗き込んだ事もありました。リコーダー少年のお母様の苦労は私の鬱病なんてはるかに超えているのだと思います。
少年のお父さんには、子供と妻の看病に二重の負担が掛かってきますので、お父さんの方も心配になりますが強い愛情の持ち主であって欲しいと思います。
特に奥様の病には病以上の強い愛情(心の強さ)が不可欠になると思います。
リコーダー少年のご家族に明るい未来がある事を信じています。

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