2010年05月14日

迷惑掛けて・・・  巨星落つ

先日急遽日帰りで福岡まで行ってきました。

以前、「雪国だより」の記事にも書いた
東北地方の過疎地での診療所を切り盛りしていた救命医。
うちの病院でも研修医への指導にも当たっていた
あのDr.が脳出血により61歳という若さで急逝されました。

Dr.は患者さんが来れば夜中でも開院して
診察をしていました。
その姿勢は私が年末、急遽応援に行った際と変わりなく
地域の患者さんや連休を利用して帰省した方々にも親しまれ
それに小さなお子さんたちには命の尊さや病気についても
考える機会を何度も与えられていた方でした。

そんなDr.なのに・・・
GWの連休中、診療所は休診していても
帰省していたお子さんが風邪気味で発熱していたので
おばあちゃんが昼間に診療所へ来られたそうでした。

車は有るけど玄関の鍵が掛かっていて、呼んでも返事がない。。。
何処か近くへ往診でも行ったのかと思い
夕方もう一度出直されたそうです。

中に明かりが付いてるようだけど誰も出てこない。。。
消し忘れて出かけたなら火事にでもなったら大変と思い
駐在所へ連絡しておまわりさんと看護師さんを呼び出して
診療所の中へ入ってみたら・・・・

恐らく亡くなってから2日以上経っているとの事で
諸手続きを経てご実家の有る福岡へお帰りになられたそうです。


大学からも私と数人のスタッフが葬儀に参列させて頂きました。
既に第一線を退き自宅でクリニックをされている80代のお父様が
葬儀後の弔問客へのご挨拶の中でこんなお話を・・・・

「息子が救命医になるといったときは正直嬉しかった!
 私も救命を志した医師なので、その過酷さも十分知っている
 だから彼には人の命に向き合う以上、
 親が死んでも患者さんをおいて葬式などに出るな。
 救命は時間が勝負、代わりの医師が居なければ
 お前が助けなければ命を失う人が出ることを肝に銘じろ!!

 そう言って救命医になった彼に贐の言葉を送りました。
 だからなのか、私より先に逝く事で彼はその約束を
 守ったつもりなのかも知れません。
 
 今日ここへ沢山の救命スタッフの方が駆け付けられ
 親としては皆さんに愛された息子を誇りに思い
 皆さんへは本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
 
 ですが、彼はこの方たちをここへ呼び出し
 その間に各救急病院でのスタッフの手薄さを引き起こしました。

 ご足労頂いた皆さんや現場をカバーしている方々
 それに今正に運ばれようとしている患者さんに対し
 これ以上無いご迷惑をお掛けした息子は
 やはり大ばか者です!

 死ぬんだったら、救命医を止めて
 現場の皆さんに迷惑を掛けない歳になってから死んで欲しかった。

 そして私の葬儀に出なくとも、私より先に逝くのは
 やはり辛すぎる。。。
 
 そんな大ばか者だったけど、
 皆さん息子の為に本当にありがとうございました。」



こんなお言葉を発せられたお父様も「生涯救命医」なのですね。

あの雪の中、患者さんが具合が悪いといえば夜中でも出かけ
救命医が居ないと言われれば、患者さんと一緒に救急車に乗り
2時間も掛けて市内の病院まで同行、疲れも見せずにオペし
診療所での対応強化の為に行政に何度も掛け合い
そして若い医師やスタッフを育てられ。。。。

雪の年末に、「なすび、今夜は煮魚が食べたい。作れるか?」
入院患者さんの急変に備え、夜通し起きてモニターチェックし
疲れた顔ながらも私の緊張を解すかのように話しかけられた
あの笑顔を私はきっと忘れないでしょう。

救命に関るものとして、このDr. そしてそのお父様の
患者さんへ対する真心は受け継がれて行かなければなりませんね。

ご冥福をお祈りいたします。







 

nasubi83 at 14:11│Comments(16)TrackBack(0)雪国便り 

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この記事へのコメント

16. Posted by なすび   2010年05月20日 18:51
徒然さん、こんばんは。

80代のお父様のご挨拶はとても毅然とされて
とてもその年齢とは思えない現役医療従事者のお言葉でした。
親子と言うより医療従事者の先輩後輩の立場と言う感じで
その気概をひしひしと感じました。

このDr.の離婚理由も奥様(同じ病院内のDr.)との
時間のすれ違いと仰っていました。
そう言う医療車同士の離婚ケースは回りに多々あります。
それだけ自分の時間を犠牲にして、患者さんに向き合わないと
現在の救命医療は成り立たないのも事実なんですよ。

その結末がこうして医者の不養生による孤独死。。。

何ともやりきれない職場です。。。
15. Posted by なすび   2010年05月20日 18:46
Toshiyanさん、こんばんは。

結果的に仕事の犠牲になった感が否めませんが
このDr.には有る意味本望だったのかも知れないです。
でもやっぱり、こんな医療従事者の犠牲の上でしか
救命医療が成り立たないのは異常な状態です!
この死を無駄にしないよう行政も動いて欲しいところです。。。


14. Posted by なすび   2010年05月20日 18:42
ばーびーちゃん、こんばんは。

逆に催促してしまったようで申し訳ありません。
どうぞマイペースを維持していてくださいね!
でもご活躍なさっていらっしゃる事も分かり安心しました。

一時期体調を崩されたご様子ですので
どうぞ無理されず、お仕事&プライベートをお楽しみくださいね!
次回はゆっくりと来福したいと思います!



13. Posted by なすび   2010年05月20日 18:38
Wiredさん、こんばんは。

過疎地に根を下ろしてやっと少しづつ診療所も行政も
このDr.の意思を理解しつつ予算も突き出した矢先なのに。。。
今後、診療所を訪れる患者さんの大変さも痛いほど分かります。
このDr.の残したものがどれほど大きかったのか・・・
本当に大きな星が落ちてしまったようで、明かりが見えません。


12. Posted by なすび   2010年05月20日 18:31
四つ葉さん、こんばんは。

定年まで大学病院の救命医として後進の指導育成に努められ
その後自ら進んで過疎地医療への救命医の必要性をアピールするため
系列の診療所へ赴任され、現地でも活躍されていた矢先の出来事に
私も辛い気持ちを隠しえません。。。

長野の方では看護師育成枠を増やしていますね。
そして全国の看護系大学の定員も増員の傾向にありますが
その中からどれだけのCNやCNSを輩出できるかが
今後の課題になります。
私も後進育成に関る立場から、
このDr.の意思を繋げて行かなければなりませんね。
いつもご心配頂き感謝しています。

11. Posted by なすび   2010年05月20日 18:27
アキラさん、こんばんは。

こんな形で福岡を訪れるとは・・・
自分でも残念に思っています。

年末年始の記事の中で、アキラさんのご質問にお答えした際に
このDr.の出身地が福岡と記したのですが。。。
読んで頂けませんでしたか?

Dr.もお父様も然とした九州男児という気概をお持ちの
立派な方でした。
本当に巨星が落ちた虚しさで一杯です。。。



10. Posted by なすび   2010年05月20日 18:23
ママさん看護師さん、こんばんは。

このDr.は何度も学会で研究論文を発表していますから
ご存知の方かもしれないですね!
後ほど詳細メールしますのでご一読くださいね。

9. Posted by なすび   2010年05月20日 18:20
ニコニコおかみさん、こんばんは。

正直未だに信じられない状態です。。。
あれ程患者さんを第一に考えられていたDr.なのに
自分の事はいつも後回しで・・・

恐らく兆候はあったのでしょうけれど
人に打ち明ける事もなく、
気づいた時には出血していたのでしょう。

辛い思いで一杯ですが、
その意思は私たちが引き継がなければと思います。

8. Posted by 徒然   2010年05月19日 22:57
年末のブログから勝手な想像で、ユーモアあふれる素敵なお医者様で かつ、責任感や使命感にあふれる方なんだと思っていました。
そして、なすびさんもこの方を慕ってらっしゃるのを感じただけにとても残念に思います。。。

お父様の言葉…とっても息子さんを誇りに思ってらしたんでしょうね。
あまりにも突然のさみしいお別れですね。
ご冥福をお祈りいたします。
7. Posted by toshiyan   2010年05月19日 13:22
このような立派なDrが我々の命を守ってくれているんですね。
61才なんて若すぎます、私よりほんの少し上ですからね。
もう少し医療体制の充実を行政に望みたいものです。
6. Posted by ばーびーちゃん   2010年05月17日 23:48
まあ、まだ逝ってしまうには
お若いですね。
お悔やみ申し上げます。
福岡までいらしてたんですね。

ご心配いただいてありがとうございます!
実は・・・・・・蓄膿で(笑)

4月末から超過密ハードスケジュールで。
連休中にとうとう風邪をひいてしまい扁桃腺ははれるわ
熱で寝込むわ、蓄膿で耳が詰まるわ(汗)

22日で一段落しそうで、今ヒトヤマ越えた所です。
今週よりまた再開します。
本当にありがとうございました!


5. Posted by wired   2010年05月17日 22:30
残念です
61歳ですか
まだまだ若い

本当に患者の事を考える
素晴らしい医者がどれだけいるんだろう

過疎の村へ出向き根を下ろして
どれだけの人の命と気持ちを救ったのだろう残念
4. Posted by 四つ葉   2010年05月15日 21:43
こんばんは。
言葉になりませんね。これが今の救命、地方医療の現実なのでしょうか。
素晴らしいDrだったのでしょう。。。そんな方がいなくなってしまうのは、つらすぎますね。そしてお父様もねっからの救命医ですね。なすびさんはもう受け継いでいるでしょうが、お二人の意思は無駄にしてはいけませんね。 半年前には一緒に働いていたかたですから、つらい事と思いますが、くれぐれもお体には気をつけてください。
私の地元の看護学校は定員が20名増員されたそうです。これで改善されていくのでしょうかね?

ご冥福をお祈りいたします。
3. Posted by sinobueakira   2010年05月15日 00:04
雪国の中で一緒に頑張ったDRの死はショックです!
寒い雪国から暑いハイチへ向った風邪気味のなすびちゃんの事が心配でしたが、まさかDrが突然こんなことになろうとは残念です。
Drは福岡の実家は福岡なんですね、こんなことで福岡に来るのではなく、ゆっくり愉しいい旅行で来てくれると良かったんですが辛かったですね!
お父様の言葉に医者魂を感じます!
しかし息子が先に逝ってしまうなんて思ってもいなかったでしょうね!
私と同じくらいのDrだったようですが、ママさん看護師さんが仰る様に無理をしすぎたのかもしれませんね!

なすびちゃんも本当に人事ではありませんから気をつけてくださいね!
Drのご冥福をお祈りいたします。
2. Posted by ママさん看護師   2010年05月14日 16:10
また一人、腕の立つ救命医が仕事に殺されましたね。
忙殺とはこう言うことでしょう。

患者さんに信頼を与えられる医師になるほど
自分の時間がなくなり家庭崩壊・離婚、そして自分の健康管理も疎かになる悪循環。

救命医や看護師の若死には、現行の医療体制のままではやむをえないでしょう。
だから救命を目指す医師や看護師のなり手がなくなり
人手不足がさらに現場スタッフを忙殺する繰り返し。。。

なすびさんも人事じゃなく気をつけるのよ!

1. Posted by ニコニコおかみ   2010年05月14日 15:47
言葉がありません。
どうして こうした立派な方を 
神様は召されるのでしょう!!
お父様の心中を思うと心が痛みます。
お父様も 息子さんもりっぱな生き方をされた方ですね。
この親子の生き方は なすびさん初め
現場に関わる後進の方達に 
必ず受け継がれていく事でしょうね! 

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