2010年11月05日

タクシードライバーのpathos

準夜明けの午前1時過ぎ。。。
やっと勤務も終わったと、同じシフトをこなした看護師さんと
更衣室へ向かう途中のフロアで缶コーヒーで一息入れていたら
循環器病棟から「急変」の連絡が入ったと、
引き継いだばかりの深夜帯の看護師さんが呼び戻しに来ました。

病棟で患者さんが急変された場合、時間帯やその状態によっては
救命のスタッフが駆けつけて処置を行なうことがあります。
その際、救命救急が手薄になるので認定看護師や専門看護師は
そのカバーのために呼び集められる事があります。

当然私も呼び戻されて、救命のDr.やCNが戻るまで
搬送されてくる患者さんの受け入れ態勢を整えていました。

1時間ほどして病棟から戻ったスタッフと引継を終え
やっと帰れると思って更衣室へ向かったのが既に3時近く・・・

また遅くなってしまったので、仕方なくタクシーで帰ろうと
タクシー乗り場へ向かうと、ちょうど1台だけ止まっていて
待たずに乗れるのがちょっとラッキーという気分で近寄ると・・

運転手さんが、シクシク泣いているんです。。。

「すみません。。 乗せてもらえますかぁ!?」
そうお聞きすると、目頭をぬぐって 「あっ! どうぞ」

行き先を告げた後、 「どうかなさいましたか?」とお聞きすると
運転手さんが少し鼻を啜りながら話し始めて

いま此処まで乗せて来たお客さんが
お父さんが危篤に成ったと連絡があったのに
その時は居酒屋で盛り上がっていて携帯が鳴ってるのに気付かず
留守電を聞いて慌ててタクシーに飛び乗って駆け付けたけど
こちらへ向かっている途中で、亡くなったと電話があったそうです。

タクシーに飛び乗った時に、「兎に角急いで〇〇病院へ」と言われ
ただ事じゃないのが分かって、出来るだけ飛ばして来たのに・・・

車中でも危篤になったお父さんの話や、
自分が飲んでいて電話に気付かなかった事を悔やんだり
自身を攻めるお客さんの気持ちが痛いほど伝わり
何とか早く着くよう道を選びながらもお客さんを励まし
ずっと話しかけていたのに・・・

亡くなったと連絡があった所からは、逆にかける言葉もなく
車中はずっと無言の空間になってしまったそうでした。

この運転手さんも一昨年お父様をなく亡くされていて
もうすぐ三回忌の法要なのだそうです。

その時も、乗務明けの非番のお昼ごろで
やっと寝付いた所だったので、病院からの電話に気付かず
駆けつけた時には既に事切れた後だったそうです。

だからなのでしょう、このお客さんの気持ちが
自分にフラッシュバックして涙が止まらなかったようです。


たまたま乗せたお客さんとの会話の中で
こんなにも相手の気持ちを受け止めて
少しでも早く着けるよう考えながらも励まし続け走ってきたのに。。。


もしかしたら私が呼び戻された患者さんの急変は
そのお客さんのお父様だったのかも知れません。

手を尽くしても助けられない事が有るのは
人一倍分かっているつもりですが、
どうにかしてその確率を下げることができないのかと
自分たちのやっている仕事のちっぽけさに
情けなさを感じる思いで帰って来ました。。。。









nasubi83 at 11:03│Comments(4)TrackBack(0)病棟 

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この記事へのコメント

4. Posted by なすび   2010年11月08日 20:14
アキラさん、こんばんわ。

もうあれから4年がたつのですね。
残された者からするとあっという間かもしれません。

そしてお父様もアキラさんのように
感謝を持ってそのお別れを迎えられたのかもしれません。

永久に消えることのない思い出と同じように
私たち残った者への指針を示された先人たちへ
恥じることのないような生き方をしなければいけませんね!

私もそう少し笑顔を増やせるよう心掛けて
父の命日を迎えようと思います。
3. Posted by なすび   2010年11月08日 20:11
ばあばさん、こんばんわ。

いつも優しいお言葉をありがとうございます。
日々の現実の中で、もう少しコウだったらとか
あとちょっと早かったら・・・etc.
そんな思いの中で人の生死を見つめていると
時々自分たちの技量の儚さを思い知らされます。

このドライバーさんのように人の気持ちの分かる優しさ
思いやりのある生き方を心がけていますが
突然の終焉を迎えられる方やそのご家族には
もう少し私たちがどうにかできていればと
悔やむこともあります。

蘇生と終焉、どちらも満足の行くものであればいいのでしょうが
私の目の前では辛さや悔いも現実として残ります。

医療者として、研究者として
日々の技術進歩そして患者さんやご家族への
心のケアも推し進めていかなければいけませんね!
もう少し頑張りたいと思います。。。


2. Posted by shinobueakira   2010年11月08日 01:40
2006年12月1日、我が家の親父が亡くなった時も同じように会社の忘年会が始まったばかりでしたが、何気なくタバコを吸いにホテルの宴会場を出て喫煙所に行った時に携帯がいつもと違う感じの音がしたようで、いやな予感がしました!
今回の記事を読んでいてその時の事が鮮明に思い出されました!
元気な親父でしたが、いつかは別れが来ることは解っていました。
大往生と言ってお別れが出来ることに感謝しました!
別れは悲しいことばかりではありませんね!
新しい自分のスタートを教えてくれることもありますね!
もうすぐ親父の4回目の命日がきます!
親父との思い出は永久に消えることはありませんね!
1. Posted by Happyばあば   2010年11月06日 06:29
タクシードライバーのPATHOS
いったいなんだろうとドキドキしました。
この方は奇しくも同じ辛い経験を2度もなさったのですね。
今度こそは!!と思われたことでしょうね。
思うように生きる事も難しいですが、それ以上に最期は突然やってくるだけになお難しいですね。

今読んでいるのはホスピスの先生のご本です。
救命とホスピス。
蘇生と終焉。
相反するもののようですが、人間の尊厳という事からみるとどちらも大切な大切なお仕事。
なすびさんは大きな使命感と責任感から、そう感じられるのかもしれませんが、けっしてちっぽけでも情けなく感じる事でもないですよ。

大変なドラマを毎日目の当たりにしながらのお仕事は、心身ともに疲れる事でしょうけどくれぐれもご自愛くださいね。

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