2011年04月09日

ウンチ君とピッピちゃん

ご心配をお掛けしましたが
お陰様で私は元気で後任部隊へバトンを渡す事が出来、
昨夜遅く取敢えず一旦帰宅することが出来ました。

離任直前の深夜には最大震度6強を記録する
巨大な余震に見舞われました。
この余震だけでもその規模は阪神淡路に匹敵するほどだとか。。

そろそろ寝ようと車で寝袋に入ろうとしていましたが
直ぐに避難所へ戻ろうと駆け出しました。
なのに地面の揺れについていけず
暫く座り込むほどの長く大きな激しい揺れでした。
事実あの余震のショックで亡くなった方も出てしまいましたし
重軽傷者も多数出てしまいましたね。。

そんな大揺れの直後にやっと復旧した電機も消え、
津波注意報も出て再避難の心配も頭を過ぎりましたが
私が不安な顔をする訳にもいかないので
カラ元気を出して、出来る限りの笑顔で避難所を回り、
怪我した人や気分が優れなくなった人がいないか
一人一人に声を掛けながら皆さんの周りを
懐中電灯で照らしながらのラウンド。

何処の被災現場でもそうですが、
目を覆いたくなる光景や被災者のバックグラウンドが
見えれば見える程こちらも涙したくなるような感情に揺さぶられます。

それでも救援に行く医療者である以上
同情的な涙は被災者にとって迷惑以外の何物でもありません。
被災者が医療者に求めるものは同情ではなく医療支援なのですから。
だからこそ、こう言う時は落ち着いた振舞いを心掛けています。
それが患者さんや被災者の方の安心へ繋がると思いますので。。

それでもさすがにこの余震には皆さんこたえたようで
「いつまで続くんだ!」とか「遠くへ避難したい」などの叫び声が。。
避難所とは言え大きな余震を何度も受けているので
その耐震性に不安は尽きません。

私がこちらへ来た時にはまだ雪もチラついていましたが
もう直ぐ春を告げに桜も咲きそうな気温に心和む日もありましたが
これでは春を楽しむ心のゆとりはまだ持てないでしょう。。。
これが被災地の現実かも知れません。

毎日続く余震に殆どのみなさんは地震酔いに悩まされ
多くの人がPTSDと言う状態では、例え仮設住宅が出来ても
余震や放射線被害の不安が解消するまでは
常に強いストレスとの戦いが続いてしまうのが心配です。


そんな被災地の情報と言うと悲惨な記事ばかりが目立ってしまい
またそうした報道が多い事も事実でしょう。
でもこうした現状だからこそ敢えて私がひと時を共にした
避難所での明るい話題をチョットだけ紹介しようと思います。

避難所では子供たちの朝も早いです!
避難が永くなり、もう慣れたとはいえ
やはり熟睡できる程に気持ちの余裕は
小さな子供たちでさえ持てない毎日だからでしょうね。

外が明るくなるころには何処となく誰となく人の動きが始まって
5時半にはもう殆どの人が布団を畳み始めています。

4月に入ってから大分支援物資が入るようになり
既に救急の患者さんのケアはほとんどなく
ストレスによる体調悪化やメンタルケアと
元々罹患されていた持病への対応
それに健康管理や病気の予防が主体になって
私も一応保健師でもあるので保健師業務も行っていました。
放射能汚染の影響で中々この地域へ保健師を派遣する
自治体がなく相対的に保健師が不足しているのです。

被災者は慢性化する先の見えない不安や、
不慣れな共同生活を余儀なくされ、
家族や知人を亡くされたり、遺体すら見つからない方も多く
仕事や学校の再開の目途の立たないやり場のない喪失感。
そして配給食に頼る嗜好に沿わない食事など
皆さんのストレスの元は尽きません。

そんな中、本来なら既に新学期が始まっているであろう
小中学生やそれより小さなお子さんたちが
炊き出しの用意ができるまで手持無沙汰な顔で佇んでいます。

そして血栓予防の為、毎朝皆さんに体操をして頂くための準備や
その後の診療手配をしている私の周りへ来ては
珍しい器具などを眺めながら色々話しかけて来てくれました。
少しずつ話し始めていると何人かのお子さんは
毎朝のようにやってきて私の準備を手伝ってくれ始めます。
それでも手伝いが終わると手持無沙汰は元通りになり
食事までの時間を持て余していました。
食事は炊き出しの為に10時ぐらいになる事も良くあります。

だったら皆で何かしようよって子供たちに声を掛けたら
お子さんたちも私の提案に乗ってくれて、じゃぁ何をしようか!?って。

中学生の女の子が避難所のお掃除を皆でしたいって言うので
お年寄りのスペースなどご自身で掃除できない方の周りを中心に
私も一緒にみんなで毎朝少しずつお掃除することにしました。
そうしているとある朝 「トイレが詰まって使えない」
そんな声が聞こえてきて子供お掃除部隊もトイレへ急行!

基本的に避難所は自主管理なので
自分たちでできる事はそこにいる人で解決するのですが
トイレの汚れが原因で詰まる事も有るので
私と一緒に中学生の男の子も手術用の手袋はめて
(ゴム手袋が有りませんから私の持って行った医療用具から借用)
詰まってしまったトイレの便器の中まで
手を入れてのお掃除をしていた時のことです。
(詰まりを流す掃除用具もないので直接手で押し流しました)

小学低学年のお子さん達が
「なすび姉ちゃん、僕も手伝いたいけどやっぱり汚いよぉ」って (-_-;)

それも仕方ない事だけど、その子たちに

 「ウンチ君やピッピちゃんはこうして見ると汚いけれど
 身体の中にずっと貯まっちゃうと怖~い病気になっっちゃうんだよ!
 だからこうしてトイレで出てくれると皆元気でいられるの。
 そう思うと出てくれると嬉しい事だって思わない!?
 それにね、トイレが汚れていると色々な病気の元が人にうつって
 一杯の人が病気になっちゃうこともあるの
 だからトイレを綺麗にしているだけで病気の予防にもなるのよ!」

片手を便器に押し込みながらそう話してみました。

汚いけれどウンチも大事な元気の元だから名前を付けてウンチ君。
オシッコも色や臭いで健康状態が分かるからピッピちゃん
                        (一応フランス語です(-_-;)
そうして名前を付けて話したら、キャハって笑いながら答えてくれて
水汲みや雑巾絞りなどを手伝ってくれたんですよ^^v

朝食前のひと仕事を皆で楽しみながら過ごした毎日でした。
私は支援物資の配給食を食べるわけにはいかないので
持参したカップ麵など朝夕二回だけの食事ですけど、
子供たちはみんな3食美味しく炊き出しを平らげてくれていました。

そして食べた後は私の所へ来て
「今ね、ウンチ君が昨日よりいっぱい出たんだよ」とか
「さっきのピッピちゃんは色が濃かったから水を一杯飲むね」って
報告にも来てくれていましたよv(^^)v


この避難所の学区では、新学期開始が例年より延期され
それまで何もしない毎日では子供たちでさえ不安が募ります。
それがストレスになってはPTSDも悪化してしまうでしょう!

こうしてみんなで「何か」をする事で
連帯感や一人じゃないという安心感、そして役にたっている
他の人に喜んでもらっているという充実感も得られるでしょう。

塞ぎがちだったお年寄りの方々も、毎朝の子供たちのお掃除で
子供と話す機会も得られて笑顔も取り戻されました。

もう少しの辛抱ですよね!?
絶対復興していきますよね!?
そうしなければいけませんよね!!
こうやって子供もお年寄りも皆の力で乗り切りましょうね!!!

私は遠目に見ながら、そう心の中で叫んでいました。

今回の二度目の派遣は震災直後の派遣時と異なり
重篤患者さんのケア&移送の緊急派遣任務ではなく
この避難所を拠点に午前中は避難者の方の診療や
不安解消のお手伝い、そして健康管理の業務を行いながら、
午後からはコーディネーターからの情報をもとに
診療を待っていられる方がいる別の避難所や保健師のいない病院
それに地域の役場へ出向いて診療を繰り返す毎日でしたが
最初に入った時より皆さん少しずつ笑顔が戻ったようにも感じました。

まだ大きな余震が頻繁に起こり
私も揺れの度に身構える程の恐怖を感じる日々でしたが
あの大地震や津波を乗り切った大切な命なのですから
放射能の危惧は残りますが、
いつの日か皆が笑顔になれるよう微力を尽くして行こうと思います。

あなたが笑顔でいられるように♪
みんなが笑顔でいられるように♪











nasubi83 at 11:28│Comments(12)TrackBack(0) ボランティア 

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この記事へのコメント

12. Posted by なすび   2011年04月12日 11:33
wiredさん、こんにちわ。

そうなんですよ!
これから気温の上昇に伴い
避難所での支援の方法が変わります。

やはり大勢が体育館などに密集していると
衛生面ではあまりよろしくない状況になりますし
支援物資の保管状況も悪くなると
思わぬ食中毒なども起こりかねませんので。。

今後は出来る限り早く「家庭単位」の仮設住宅へ移住を進め
衛生管理を徹底していかないと
二次災害をも招きかねないんですよね!

早くインフラと物資輸送が通常化することを願いたいのですが
原発問題と余震が収まらないと・・・

いつもご心配ありがとうございますね(^^)


11. Posted by なすび   2011年04月12日 11:28
ニコニコおかみさん、こんにちわ。

いつもご心配ありがとうございます。
現地では泣けなかった桿状のゆさぶりを
帰宅してホッとしたのか、ランディを相手に
一日涙していました。

でももう大丈夫、のはずです。。。
又すぐに派遣がかかるでしょうから
いつまでも泣いてはいられませんよね。
泣きたいのは私ではなく、被災地の方ですものね!

まだこちらでも大きな余震が続き
気分的にゆっくりとはいかないのですが
大きな揺れの数秒前に発令される「緊急地震速報」のアラームが鳴るたびに
ランディをクレートヘ入れて避難体制をとる毎日です。。
10. Posted by なすび   2011年04月12日 11:23
sacchinさん、こんにちわ。

東北人皆んなが満面の笑顔になれるよう
心穏やかな日々を過ごせるよう
そんな日が早く来るように微力を尽くしますね!

東北の方々の粘り強あの骨太の精神力は
応援に行った私の方が勇気づけられる逞しさを
感じる程でしたもの!
あの人柄・お国柄で絶対にこの難局を乗り切れるでしょう。

東北の人の優しさに包まれた支援でしたよ!
ご実家の方に被害はありませんでしたか?
そして元気なツインズ誕生を楽しみにしていますね。
そのお子さんたちにも、力強い東北魂が宿っているのですものね!!

9. Posted by なすび   2011年04月12日 11:18
徒然さん、こんにちわ。

ありがとうございます。
現地を離れて帰宅したら、今度はこちらでも大きな余震が続き
チョット怖い思いをしています。。。

気持ちが落ちつけるようになれば
心も体もゆっくり出来るのでしょうけれどね。。

8. Posted by なすび   2011年04月12日 11:16
アキラさん、こんにちわ。

余震はかなり頻繁に起こっています。
あれほど大きな余震はひと月振りかも知れませんが
昨夜から今朝にかけ、こちらでも大きな余震が遅い
皆委縮ムードにさいなまれています。。

春と言うのに気分的には外に出る気が中々起きず
大学のイベントで外へ出る以外は
他の人も多くが、
「外出中に余震がきたら電車は止まるし節電で街は暗いし帰宅できない不安が募るので外出は控える」と言う人が多いです。

被災地ばかりでなく首都圏でもまだ震災の影響は大きいです。。
7. Posted by なすび   2011年04月12日 11:10
ばあばさん、こんにちわ。

今週から大学の授業も始まったので
何とかシフトを調整して病院&大学といつも通りの勤務に戻り
少しづつ「普通」を取り戻そうとしています。

帰宅後ランディがずっと寄り添ってくれて
私の涙を受け留めてくれたので助かりました(-_-;)
今朝も大きな余震があり、彼には一人さびしい思いをさせ
申し訳ない気持ちで一杯ですが
一緒にいてくれることに感謝しています(^^)
6. Posted by wired   2011年04月11日 22:13
こんばんは
そうかそうだよね
医療だけでなく心のケア
そして全てを自分達でですよね
そうやって皆で協力していく事が
団結して前に向かう力になっていくんだよね
率先して避難所で立ち向かっている
なすびさんは素晴らしい
これから気候が暖かくなってくると
伝染病などが被災地で発生しないか
心配です
早く、医薬品が充実し、少しでも環境の整った所で生活できればと思っています

最近は孤児になった子供達の記事を読んでいると泣けてきて読めないです

5. Posted by ニコニコおかみ   2011年04月11日 00:12
お疲れさまでした。
涙したい気持ちを抑えて 医療者として支援に当たるなすびさんの姿はすごいと思います。
避難所の方々 そして子供達にとってどれほどなすびお姉さんの存在が心強く
勇気付けられていたことでしょう。
まだまだ先が見えるには 長い時間が必要と思います。
また派遣要請がかかることもあるでしょう。
今 少しでも休める時間がとれるのなら心も体もゆっくりと休めてください。
おかあさんやランディ君との時間も
取れますように!




4. Posted by sacchin   2011年04月10日 17:43
お疲れ様でした。
子育て中の私でさえ頭がさがる、とても素晴らしくてあたたかい説明。
なすびさんに励まされた方
きっと沢山おられた事でしょう。
私は遠くから見てるしかなくて歯がゆいけれど
心から祈っています。
東北人がみな心から安心できる日がはやくきますように。
3. Posted by 徒然   2011年04月10日 08:20
おかえりなさい。ありがとうございました。
大きな余震の続く中で後任部隊への引き継ぎは、真っ先に現地に入られたなすびさんにとってはまだし足りない事がと言う思いだったんでしょうね。
でも、少しゆっくりなさってくださいね。
2. Posted by shinobueakira   2011年04月10日 00:53
救援医療者のなすびちゃんの同情的な涙は迷惑以外の何物でもない!と言う強い気持ちにはプロ意識を感じますね。
これほどまでに世界中で大きな地震が続発し、その度になすびちゃんの救援活動を知ってしまうと、自然の力にも情けをかけて欲しくなりますね!
昨日の大きな余震でも、被災者達には追い打ちでのダメージになったことでしょうね。
容赦なく余震も続いているようですが早く余震だけでも収まってほしいものです。
寝袋生活でなすびちゃんもゆっくり睡眠もとれなかったようですからお風呂に入ってゆっくり休んでください!
ランディ君も寂しいでしょうが久しぶりに会えて喜んでいるでしょうね。
1. Posted by Happyばあば   2011年04月09日 14:06
無事に帰って来られたんですね。
後ろ髪ひかれる思いだったでしょうけど
なすびさんも少しは休まないといけませんよ。
でも日常業務が待ってて休めるかどうかはわかりませんね・・・
とにかくご尽力くださってどうもありがとうございました。
お疲れ様!!
ゆっくりランディ君にお顔見せてあげてくださいね。
お疲れなのにていねいなお返事ありがとうございました。

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