リコーダー

2008年12月06日

その後。。。

皆さんにはご心配をいただきました。

このリコーダー少年の御両親、
とりわけお母様の病状を少しだけ記す事で
このご家庭が抱える問題を悟って貰えるかも知れないと思い
「その後」として、書かせていただきます。

先ずお母様の現状ですが
自傷後の入院から間も無く、脅迫性障害も顕著になり
病室から出れなくなっていました。

よくあるケースでは、誰かが自分お悪口を言っているとか
TVやエアコンから電磁波が出て
自分が解けてしまうのではとかなどと思い込むことが多く

酷いケースになると、誰かが私を狙っているなどと
深刻に思い込み外出も出来ずに、社会生活を送れない
そう言うケースも見られます。

このお母さんのケースは正に主治医と病棟看護師以外
御主人すら「信じられない対象」になってしまい
誰とも話をしない状況になっていらっしゃいました。

御主人の両親からの不用意な言葉が
それまで看病に費やしてきた9年の歳月を覆させ
先天性という病名を履き違えた責任追及を母親にし
ご自身の拠り所をなくされてしまっていました。

御主人の言葉すら深読みしてしまい
全てを信じられない状況から、自分を消し去りたいと
そう言う感情を抱かれたのかもしれません。

結果自傷に走り、それを見舞う舅・姑からの言葉も
お見舞いではなく「いやみ」に受け止めてしまう。。。

その悪循環から御主人との会話も拒絶されるようになり
コミュニケーションの崩壊。
既に家族としての信頼感がなくなり、
今後は奥様の実家近くの病院への転院し
暫く環境を変えての治療が必要と判断されました。

確かにうちの病院では
お子さんとの思い出も多すぎるでしょう。
お見舞いに通った病室の窓からの風景を見ながらでは
ご自身の回復にも繋がりにくいはずです。

Dr.の紹介もあり、
今週そちらの病院へと転院されていかれました。

お子様の長期入院、
そしてその看病に精一杯だったのでしょう。

結果はそう簡単に見えるものではないのに
回りからは不憫さを強調する言葉が聞こえ。。。

その言葉の矛先が自分に向けられているとの強迫観念。
やがて家族をも不信となり、全てを拒絶。

そうしてデススパイラルとへ落ちていくのは
そう時間のかかることでは有りません。

この後は焦る事無く、ゆっくり時間をかけて
ご自身の回復に努めていただければと願うばかりです。。


お子さんの病の影に、これもまた悲しい現実として
ご家族の問題も浮き彫りになってしまった現実でした。。


















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2008年12月03日

感謝しております

ご無沙汰してしまいました。

暫くぶりの更新になります。
色々な事が突然に起こり、その内容をブログにて
御報告するのがなかなか出来ずに
今日まで時間をいただきましたことお許し下さい。


先ずこちらへ暖かいコメントを寄せていただきました皆様
そして直接メールをくださいました皆様に
ご心配をおかけしました事をお詫びし
感謝しております事をお伝えしたいと思います。

報告をしなければならない事とは。。。

以前こちらで紹介した患者さんのことなのですが
その患者さんへの心温まる励ましのコメントや
そのご家族への病に対するご心配などを
みなさんから頂きていたのに、結果的に力不足で
デススパイラルへとはまって行ってしまった事を
どうお知らせしようか悩んでいました。

一時は報告自体をしないことも考えましたが
皆様のコメントなどを患者さんへもお伝えした事もあり
ご心配をおかけしている事を踏まえると
避けて通れない事実として、記する事に決めました。

そして御家族に代わって、
私から皆様へ心より謝意を述べさせていただき
患者さんを弔いたいと思います。


患者さんとは「リコーダー」題した記事で紹介した
9歳の先天性呼吸器疾患の男のお子さんです。

先月末、数日の危篤状態から回復する事無く
大好きなお母さんの手を握ることも出来ずに
僅か9年の人生の幕を下ろし旅立たれました。

私が知り合った頃は回復も順調で体力も付き、
自身でほぼ自由に院内なら歩き回れる程になり、
肺のリハビリをこめて、Dr.がプレゼントしたリコーダーを
宝物のように握り締め、日々練習していたのですが。。。

生後間も無く母の手を離れ入院生活となり
以後小学校の入学式も、入院中の病院から出席して
楽しいはずの幼稚園や小学校も殆ど通う事も出来ず
院内生活を余儀なくされ続けた日々から、
やっと回復の兆しが見え始めていたのに。。

お子さんの回復に反比例するかのように
お母様がその病に対する自責の念に駆られ始め
塞ぎがちになり、心療内科での加療を受けられている
さなかの自傷。

その事をお子さんへ知らせまいとする
ご家族のお気持ちも分かります。

ただ、お母さんがいつまで経っても
面会へ来て貰えない事への疑念と不安が
お子様の病状を悪化させ・・・

食欲がなくなり、栄養補給を点滴に切り替えるまでに
10日と掛からないほどだったそうです。

その後もお母さんの心療内科での入院が長引き
お子さんへの謝罪のお気持ちも有ったようで
面会を頑なに拒んだそうでした。。。

そして家族のコミュニケーションも崩壊。
お子様の病状を悪化させるのに
そう長い時間は掛かりませんでした。

9年かけてやっと仮退院のうえ小学校へも
体験登校できるかと、お父様を初め御家族やDr.
そして担当Nr.などのスタッフも
明るい兆しに胸を弾ませていたのに。。。


以前も書きましたが、
小さなお子さんに大病させたりすると
殆どの母親は先ず自分を責めます。
そしてこう言う自傷に走るケースは稀ではありせん。
メンタル的に一杯一杯になってしまうのも理解できます。


御主人が心療内科のDr.と相談して、
兎に角、息子さんへの面会をするよう促しても
それを拒むのも愁訴状態から無理強いは出来ません。
なぜならお母様も既にメンタルへの大きなダメージを
受けているのですから。。



呼吸器科の同僚と一緒に告別式に参列しましたが
お母さんは式を受入れられず、
読経中も控え室で親類の方や同僚看護師が
見守るなか横になられていました。

小学生の告別式ですと、
学友の小さな啜り泣きが聞こえるのでしょうが
在籍していたとは言え、
実際に通った事の無い小学校からは
教頭先生がお独り参列されているだけでした。

やはり子供さんの長期入院は、
いろんな意味で代償が大き過ぎます。


そして何より、
病と闘っているお子さんの大きな力に成るのは
どれだけ医療が発達しても、身近な御家族なのです!

あれだけ回復に向っていたのに・・・
お母さんの病状を察するかのごとく自身の身を削り
急激に食欲を落とし、体力・免疫力を下げてしまい
一気に合併症を発症して、
あっと言う間に旅立たれるなんて・・。



お子様も無念でしたでしょうが、
今後のお母様の回復には、より大きな重石が
圧し掛かってしまったように感じます。



長くなってしました。
ブログでは事実を述べるだけで
字数が一杯になってしまいます。

行間からこのご家族の小児疾病との戦い様と
その壮絶さをを汲んで頂ければ
多少なりともブログに記した事も報われる想いです。

皆様の温かなコメントはしっかりとお父様に伝えました。
クリスマスにプレゼントが届くかもと笑顔になったことや
お母様と同じ病と闘った方の体験談やお気遣いなども
患者さんや御両親に話した時の
ホッとされた安堵の表情も忘れられないものになりました。

医療技術にはやはり限界が有ります。
そして肉親のサポートほどのミラクルパワーはありません。

今回皆様から頂いたお心遣いは
肉親のサポート同様、このご家族の心の支えに
成った事と信じています。

最後に告別式の後、お父様からブログの皆様へ
「どうぞよろしくお伝え下さい。お心遣いに感謝しています」
とのメッセージを承って参りました。

ある昼下がり、救急車用ロータリーから聞こえた笛の音から
これ程皆さんへの関わりを深くさせて頂いた事を
心から感謝しています事を重ねてお伝えいたします。

結果的に無念さは残りますが・・・
本当にありがとうございました。


at 15:39|PermalinkComments(12)TrackBack(0)

2008年11月19日

ご家族の負担が。。。

心配していたことですが・・・

私の勤務が始まって間も無くホットラインが鳴り響き
自殺企図の女性の搬送要請がありました。

入ってくる情報から受入準備を整えるのですが
容態は2次救急病院での対応相当のように思えます。

それが患者さんのご主人の依頼でこちらへの搬送を希望され
その理由が、こちらの心療内科への通院歴が有る事と
息子さんが入院中という事からのご希望だったようです。

到着時までお名前の情報は無かったのですが
何となく私には嫌な予感みたいなものがありました。

そして到着時、ストレッチャーに乗った患者さんのお顔を見て
その予感が当たってしまった事に愕然としました。

以前、このブログでご紹介したことのある
呼吸器科へ入院されている小学生の男の子のお母さんでした。


お子さんがリハビリの為にDr.から貰ったリコーダー(縦笛)を
宝物のように大切にして、毎日練習していたあの少年のお母さん。

先天性肺疾患のお子さんの長期治療に悩まれていらして
Dr.の勧めで心療内科を受診されていた矢先の自殺企図。

幸い2次の病院で対応出来得る範疇の症状でしたので
搬送時に意識も有り、私の顔を覚えていらしてくださったりと
検査と処置を終えると、通常ならご家族も受入可能との事なので
直ぐに退院できる状況まで安定されていらしたのですが、
ご本人の希望も強くそのまま心療内科へ転棟されて行きました。

私も勤務後に白衣のまま心療内科のベットへ様子を伺いに行き
少しお話をする事ができましたが、
まだ興奮を抑えるお薬が残りボーっとされていらしたので、
長居はせずにご挨拶だけして引き上げました。

そして帰り際にご主人から声を掛けられ少しお話を伺えました。

最近の鬱傾向の激しさから、いつかこんな事を起こすのではと
ご主人の出勤前に台所の包丁やハサミ類を隠したり、
救急箱のお薬も錠剤や粉剤などは全てしまって出かけたそうです。

それが昨日は一人でお子さんの面会に出かけた帰り道に
市販の風邪薬などを買った事にご主人も気付かず、
奥様はそれらを大量に飲んでそのままお風呂へ入ったそうでした。

間も無くご主人が様子を見に行って異変に気付いて119要請。
症状は軽くて済みましたが、心の傷はまだ癒えていないでしょう。


お子さんは生まれてからほぼずっと病院での生活を余儀なくされ
学校に上がる歳になっても入学式には病院から出掛けたそうです。

それでも最近は一人で院内なら歩けるほどの体力も付き
一時的な長期外泊(期間を決めた仮退院)も可能なほどまで
回復されてきていたのですけれど。。。

そこまで頑張って応援されて来られたお母様のご苦労が
ここへ来て内向きに爆発してしまったのでしょう。

小さなお子さんを亡くされたり、大病をされたりすると
殆どの母親は先ず自分を責めます。

こんな身体に生んでしまった自分がいけないとか
母親としてもっと注意して上げればこんな事にならなかったとか

そして自責の念に駆られ、こう言う自傷に走る方は多いのです。

搬送されて初めて御家族がその負担の重さに気付く
そう言うケースは珍しい物ではないのです。

ここまで思い詰めていたのかと嘆くご主人・・・

心療内科の主治医の話からも、こう言うケースは良くあるそうで
燃え尽き症候群のように、一つの山を乗越えられそうになった時に
それまでの責務を果たした事を振り返り、
逆にその原因が自分に有ると思い込んでしまうそうです。

お子様の回復の支えになっていたお母様には
そのサポートをご主人が十分にこなされていたのでしょうけれど
お子様の不憫さを思い儚み自責の念に駆られてしまったのでしょう。

実直な方であるが故に、お子さんへの思いが必要以上に強まり
その責任感に苛まれてしまったのが痛いほど分かります。


お子さんの長期入院や社会性の育成にも心配の種は尽きず
一人でその責を背負い込んでしまったお母さん。。。

入院が長引くご家族のいらっしゃる家庭へのサポートは
並大抵の事ではないのですから
家人のみならずのサポートが重要になってくるのでしょう。

そうでなければご家族の負担が大きすぎますもの・・・。

お子様の回復が進んだ事は喜ばしい事ですが
それに起因したお母さんの自傷、そして入院。。。

このご家族へはお父様を含め、
カウンセリング等で責の向け方を話し合うお時間が必要です。

お母様の自傷をお子さんに告げる事も出来ない情況ですから
ご家族3人での今後の道筋を、この入院中にゆっくりと
心療内科の医師やカウンセラーとの治療に当てて頂ければ
そう遠くない時期にご家族3人で過ごす時間を持てるでしょうね。

今は少しご家族だけの時間を大切にされて欲しいと思います。

それがお母さんの心的回復になり
そして何よりお子さんの肺疾患の回復にも繋がるのですから。。。













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2008年09月25日

リコーダー

リコーダー、皆さんお使いになったことありますよね!?
小学生の時に音楽の授業で習った縦笛の事です。

よく小さなお子さんがランドセルの片側に立てて差し入れ
学校へ向うのを見かけることありませんか!?
あの縦笛がリコーダーです。

もう私の回りであの音色を聞く機会は無くなってしまったのですが
先日久しぶりにあの音色が病院の中から流れてきました。

最初はどこから聞こえてくるのかさえ分からなかったのですが
日勤の日の昼下がりに、2日続きで聞こえてきたので
救急搬送の出入り口近くで外を気にして見ていたら
パジャマ姿の男の子が、救急車出入り口脇のロータリーで
リコーダーを吹いているんです。

ただ最初に聞こえた時から思ったのですが
あの曲かなって思いつくメロディなのですが、
拭き方が途切れ途切れで、音量も強弱がバラバラに聞こえました。
だから上手になりたくて練習してるのかと思いましたが。。。


本来患者さんが入ってはいけない救急車用のロータリーでもあるので
その男の子に声を掛けてみると・・・

なすび 「リコーダーの練習してるの? 何科に入院してるのかな?
    ここは救急車が猛スピードで入ってくるから危ないよ。
    練習ならお姉ちゃんと一緒に屋上へ行ってみない?」

男の子 「呼吸器科だけど、屋上は人が多いから嫌だ」

なすび 「そっか、呼吸器科なのね」

小学生が小児科でなく、呼吸器科に入院しているのですから
リコーダーもただの練習で拭いているのでないのは直ぐ理解できます。

なすび 「頑張りすぎちゃうと、お胸苦しくならない!?」

男の子 「成るけど、やっとここまで続けて吹ける様になったんだよ」

そう言って笑顔でリコーダーを私に見せてくれました。


この患者さんは先天性(生まれつきの病気)肺疾患があって
今まで何度も入退院を繰り返し、肺の手術も何度かされ
学校へも中々通えないそうでした。

小学校3年生になって、体力も付き始めたこともあり
本来の治療に加え、肺のリハビリに繋がる事も兼ねて
呼吸器科のDr.が小さなリコーダーをプレゼントしたそうです。

笛などを吹く事で、肺活量も増えますし
呼吸器全体の活性にも繋がるんですよ。

本来学校で貰えるリコーダーは、入院生活も長かったので自宅になく
この子が初めて目にした笛が、Dr.に貰ったリコーダーだったとか。。。

それ以来嬉しくて、毎日吹いて見たそうですが
最初は肺からの呼気が十分でなく、音も出なくて直ぐに疲れてしまう
そんな日々だったそうですが、飽きる事無く毎日続けて
今では病棟内では他の方へ迷惑がかかるほど
音も出るようになったそうです。

それで病棟では吹けなくなったので、病院内でも拭けそうな所を探し
このロータリーへ辿り着いたという事でした。


まだ3年生、人の目を気にせず練習するには
恥ずかしさが勝る頃ですものね!
屋上で他の方がいる前ではチョッと吹けなかったのかも(^-^)

でもこのロータリーでは危険なので、呼吸器科の友人へ連絡して
どこか練習できそうな場所は無いか探してみたら
午後なら外来ロビーの相談室なら空いているとのことで
明日から毎日そこが彼の練習場になりました!

でも外来は不特定多数の方が出入りする場所ですから
入院患者さんが毎日出入りすると、感染の可能性が高まります。

それもあって毎日彼が使う前に、相談室のカウンセラーさんが
室内除菌してくださり、午前中に感染症の疑いのある患者さんが
その部屋を使用した場合は、彼が練習に使う前に
病棟へ連絡をしてくれる事になりました。


これで彼も心置きなくリコーダーの練習が出来るでしょう!

そのうち1曲続けて吹ける様になったら
私に聞かせてくれる約束もしてくれたんですよ!


「でも最初に聞かせて上げなきゃいけないのは
 お父さんとお母さんだよね」って言ったら

「最初は○○先生(リコーダーをプレゼントしたDr.)と○○さん
  (○○さんとは呼吸器科の私の友人看護師です)
 で、パパとママ。 なすびさんはその後ね!」 だって。。。


私に聞かせるのが最後になっても良いけれど
一曲吹けるほど肺機能が回復したら退院も直ぐでしょう。
そうなる日を楽しみに待っているからね。


Dr.に貰った子供用のリコーダーだけど
彼にとっては大事な宝物になったようです。

明日の午後から毎日元気な音色が相談室から聞こえてくるでしょうね!











at 00:48|PermalinkComments(8)TrackBack(0)
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